AV好きすぎるAVライターとAV嫌いすぎるAV女優 case3rd「AV女優にはある日突然、ライバルが誕生する!?」

 

 

第一話 AV好きすぎるAVライターとAV嫌いすぎるAV女優

第二話 AV好きすぎるAVライターとAV嫌いすぎるAV女優 case2nd「再び会ったライターと女優」

 

AVライター葉隠美喜男(はがくれ・みきお)、AVライターとなって初のショックを受ける!?

その日、web情報から流れてきた記事を見て、愕然とした。

 

「大型新人AV女優、扉乃まくり×酒巻みくる、ライバル同士が初対面座談会!」

 

この企画のライター担当が、なんで俺じゃないの? 

まくるんとみくるんの「りんるんコンビ」とキャッチを考えたのは、この俺なのに!

 

(たぶん、同時期のAVライターは誰もが考えたとも思うのだが……)

 

「僕が一番、このふたりの会話を聞けるんだ!」と、アムロが言ったセリフを嘯きつつ、仲良さそうに抱き合っている「るんるんコンビ」が目に飛び込む。

 

「あ〜あ。この空間にいたかったなぁ……よし! このふたりはシャアとアムロのような、運命のライバルだ。来年の賞レースでは、絶対にこのふたりのバトルが展開する! ふたりのAVを研究して(私はレビューではなく研究と呼ぶ)、『ライバルスペック対決!』で決定だ!」

 

「まず、今日はどっちでフィニッシュを迎えるかの興奮度チェックだ!」とDVDデッキを動かし、ふたりのAVを用意して、おもむろにパンツを脱いだ。

 

DVDが稼働する前なのに、ギンギンになっている自分自身を見ると、なんか目があったような気になり(もちろん、私のチ●ポに目などないのだけど)、「今日はりんるんコンビと3Pする夢が見れそうだね……」と語りかけてくるような気がした。

 

AVライターにとって至福の時間は、日中からAVと妄想に浸れることなのである。

 

 

 

AV女優扉乃まくり(とびらの・まくり)、ライバル争いが嫌い!?

AVって知っているようで知らなかった……1年間にこんなたくさんの新人女優が登場するなんて!

まくりん(自分でも自分のことをこうやって呼ぶくせがついてしまった)がデビューした翌月には、5人以上の女の子が、他のメーカーはもちろん、まくりんが専属契約をしているメーカーからも女の子がデビューしている。

 

AVメーカーでも、「単体女優」と呼ばれるメーカー専属女優は、毎月10人もデビューしない……しないが、それがほぼ毎月のように登場するなんて、webニュースほどにしか、芸能界の知識を知らない私からすると、当初は理解ができなかった。

 

ライバル……学校時代、部活もやってないし、テストも個人成績が上がったり下がったりするのは、相対的な関係があるから、1位だろうが、3位だろうがそんな感動はなかった。

 

運動嫌いだから、そのジャンルは私には門外漢な話題であり、得意だった絵ですら、先生に推薦されたから、コンクールにも出品したぐらい、しかも「あれは勝手に先生がやったこと」なんて言っていた。

 

「争い事のない世界」を謳歌してきたのだ。

 

ところが、まくりんになってからというもの、「先月の作品も売れ行きアップしたから、この調子で頑張ろうね!」と、マネージャーやメーカー担当者から聞かされる。

 

自分で調べたことしか信用しないまくりんは、表面上は、「本当ですかぁ?」と言いつつも、結果、webでエゴサしている。

 

「え? 前作よりも順位下がってるじゃん。やっぱりあのパケは良くないと思ったんだよなぁ」

 

心のつぶやきが、家では漏れ出してしまう。

 

そして、上下動するまくりんの順位に、一喜一憂している。

 

怒りモードになったり、悔しくて涙が出そうになったり、情緒不安定なんて言葉は、「辞書にしかない言葉」と思っていたはずが、感情がジェットコースターに乗っているような感じなのだ。

 

そこにきて、5カ月経った今、愛称がそっくりな女の子が登場しやがった……しやがったって言いかたはまくりんどころか、女の子としてどうなんだろう?(笑)

 

「明後日の仕事だけど、web媒体とAV専門誌の企画として、「りんるんコンビ」(これまた安直なネーミングに辟易して軽く笑ってしまった)で座談会です。

メイクは自メイクで写真撮影有りなので、あまり濃くしないように」とマネージャーからのLINE。

 

「誰がメイクが濃いじゃ!」とLINEに書き込み、笑顔のキャラアイコンを送った後、その「坂巻みくる」ちゃんの名前を検索バーに入れて、ライバルの下調べする。

 

「まくりんはライバルなんて興味ないだよ!」またたわいのないひとり言が、自分以外いない部屋に響き渡った。

 

 

「動揺するまくりん」と、「笑顔満面のみくるん」

「まくりん先輩! 今日はよろしくお願いします! 本当に小さくて可愛いですね。

さかまきは、もうちょっとだけ小さいのが可愛くてよかったんです。でもおっぱいはさかまきがちょっとだけ勝ち♪」とみくるんちゃんからの先制パンチをもらう。

 

「こ、こちらこそよろしくお願いします! せ、先輩だなんて!」

 

(なんだこの、キラキラした動物は! 発光体かよ、太陽かよ、ハッピーオーラ出過ぎだろ)

 

「デビューする前に唯一見たAVって、まくりん先輩のデビュー作だったんです! すごい可愛くて、でも超エロくて、さかまき、興奮しちゃったんです♪ きゃあ言っちゃった!」

 

この発光体動物から繰り出される、可愛い可愛い攻撃は、いちいち自分の痛いところに刺さる。

 

(自分がこんなに可愛くて素直だったら、高校生のとき、もっと違ったタイプと恋愛して、違う人生だったのかもなぁ)とか、ふと冷静に自分の過去を思い出させる。

 

キラキラしつつも、まるで、まくりんの急所を知っているかのような言葉が続いていた……

普通に考えれば、ただの誉め言葉なんだけど、気にしすぎだろうか。

 

原稿チェックで上がってきた原稿を読ませてもらうと、中間に入っていたライターさんが、いい感じにバランスをつけて、仲良く喋っているように仕上がっていた。

 

私のこれまでの物語に登場したことがないというか、「見向きもしなかった」ポジティブで、可愛いく素直で、全てに前向きな女の子に出会ったことで、「まくりんの世界が崩壊しそうになっている?」と感じている。

 

あの座談会の日から相互フォローしたため、Twitterの私のタイムラインには、みくるんちゃんがDVDサイン会イベントでコスプレを披露したつぶやきが流れてきた(最近は、土日ではなく平日夕方からも、サイン会を行うことがあるのだ)。

 

あの日と同じ、みくるんちゃんの、キラキラの発光体のごとき笑顔は、その日の私のメンタルには、とても眩しく、直視できることができなかった。

 

 

 

新人AV女優酒巻みくる(さかまき・みくる)の一日の終わり

今日のイベントのコスプレショットとともにお礼の挨拶をTwitterをアップする。

 

メイクを落とす前にファンレターを読む。

私が、ファンのみんなから愛されていること、頼りにしてもらっていることを実感し、感激する重要な時間だ。

 

そこからメイクを落とし、シャワーを浴びてから、ジッと鏡で自分の顔を見つめる。

 

これは、私自身と、坂巻くるみが分離する儀式の時間だ。

 

そのとき、私自身が私の体の中へと戻っていく。

 

ファンの感謝の言葉が頭の中を反芻されながら、鏡を見ながら自分自身へと問いかける。

 

「あなたは間違っていないよ。あなたは、私が欲しかったのは、『坂巻みくる』なのだから」

 

 

 

新人AV女優酒巻みくる(さかまき・みくる)は「頼りにしてもらう自分になりたかった」

私は高校生のころ、目立たない子だった。

 

1日ずっと喋らない日なんてほとんどだったし、家族とも少ない会話しかしていなかった。

 

「あなたが見ているアイドルみたいに明るくして」と母が何気無い言葉だけど、私にはとても痛みを感じる言葉を無意識に投げかける。

 

(私だって、明るくしたい……)

 

私が、他の人たちなど関係なく大声を出せる日は、大好きな道路の名前がついたアイドルのライブに行く日だけだ。

 

「最近はチケットが取りづらくなったなぁ……」と嘆く。

 

中学生で夢中になったころは、親が用意してくれた。珍しく、私が欲したから。

 

しかし高校生になると、「お小遣いでなんとかしなさい」と言われてしまった。

 

高校でもお喋りができない私が、アルバイトなんてできるわけがない。

 

CDの購入数で時間の決まる握手会のハードルはとても高かったのだが、「大人と会う時間」を過ごすことで、参加費用を稼いでいた。

 

後悔などしない。だって、そこには、私が頼りにしている推しメンとの一瞬しかない握手の瞬間があるから。

 

緊張しすぎて言うどころか、むしろ推しメンに、「また会いにきてね」と言われてしまったほどだったので、伝えることはできなかったのだが、あのときの私が言いたかった言葉は、「あなたは私が生きる頼りなんです」という言葉だった。

 

「人から頼りにしてもらう存在」

 

高校を卒業して大学に進学するために上京し、高校時代と同じような時間を過ごしていた。推しメンとの会える瞬間のための「大人に会う時間」は、引き続き行っていた。

 

珍しく渋谷を歩いていたときに、知らない男、いつも会う大人とは全く違う、身ぎれいにして優しそうな笑顔をする男の人に声をかけられた。

 

その後は、自分でも不思議な時間が進んでいった……アルバイトもしたことがない私にとって、ちゃんとした大人と会うのは初めてだったのだけど、そこは、今までの大人とは違う、会う人みんなが優しい笑顔で私に接してくれて、頼りにしてくれる場所だった。

 

そこはAV事務所だった。

 

デビューは決まったのだが、まだ芸名が決まっていないころに、事務所近くの側に行く機会があると、必ず立ち寄るようになっていた。

 

LINEに登録している社長さんに電話をかけて、「事務所に遊びに行ってもいいですか」と言うと、躊躇することもなく、「ぜひどうぞ。僕はいないけれど事務所の人たちに連絡しておくから」と言われる。

 

事務所に到着すると、忙しそうに働いているスタッフさんたちの誰もが、「こんにちは!」と優しい笑顔で声をかけてくる、とても居心地のいい場所。

 

当時から、私の話の相手をしてくれたのは、今のマネージャーのKさん。

 

彼の会話は、内容もオチも全くない、面白さのかけらもない話ばかりなのだが、この人と話をしていると、なぜか笑ってしまう。

 

(安心できる場所を見つけたんだ、私)

 

「芸名を考えるゲームしようか?」と言われ、ああでもない、こうでもないと変な名前を考え、運勢が画数で分かるサイトで爆笑したりしていたところに社長が戻ってきた。

 

「この間、面接してくれたメーカーさんが、『坂巻みくるって良くない?』って言ってたんだけど……どう?」

 

名前を言われたとき、私はとてもいい笑顔をしたそうだ、その覚えは全くない。

 

その瞬間から、私は『坂巻みくる』となる。

 

 

デビュー前に自分のデビューをアピールする「販促」のために、AVショップに初めて行った。

そこには数えきれないほどの可愛い女の子たちがDVDになって置かれていた。

 

ディスプレイの目立つ場所には、私のポスターが、家に貼っていた道路の名前のアイドルよりも大きなサイズのポスターが貼られている。

 

お店の人にサインを頼まれてそのポスターに書く。

 

このサインはKさんが徹夜して考えてくれたものを、私が『かっこ悪い』と言い切って、自分で考えたものだった……どこか推しメンのサインにも似ていて、お気に入りだ。

 

さらにたくさんのチェキを撮影した。

AVにつけて売るらしい……屈託ない笑顔の私。

 

赤ちゃんのときの写真を見ると、私は笑っている。屈託ない笑顔で笑っている。周りの人たちが、自分を見てニコニコすることが、嬉しかったのだろう。

 

私は、かなうわけないと思っていた、「人から頼りにしてもらう存在」になれた。

 

だから私は、自分がつかんだ、「坂巻みくる」という女の子を離したくないのだ。

 

そのお店で、私よりも目立つ場所にポスターが貼られていたのは、「扉乃まくり」というキュートな笑顔の可愛らしい女の子だった。

 

その女の子に、先週、座談会として、本物と彼女に出会った。

 

「扉乃まくり」は、印象よりもとても小さくて可愛くて、誰もが放っておけない存在感がある。

 

私は、彼女との座談会を、高校のころに羨望の眼差しで見ていたクラスの人気者女子と、アイドルの推しメンの対応を真似しながら、喋り続けた。

 

誉め殺しは、聞き手に隙を与えず、周囲に悟られることなく、攻撃することができる。

 

どこかで、(この子には先制攻撃をしておかないと、私の地位が崩れてしまう)と思い、笑顔を使い、攻撃をしかけたのだ。

 

鏡を見ながら、「さかまきのは、まくりんへの攻撃じゃないよ。彼女が可愛いことを褒めただけだよ」と自己弁護のような自己催眠のようなセリフを言いながら、明日のスケジュールを再確認してベッドに入りこんだ。

 

どんなことをしても、私は後悔はしないし、『坂巻みくる』には悪意は全くない……だって、私は届かないはずの星を握りしめることができたから。

 

「坂巻みくるとして、他人から頼りにしてもらう存在」になれたのだから。

 

 

第一話 AV好きすぎるAVライターとAV嫌いすぎるAV女優

第二話 AV好きすぎるAVライターとAV嫌いすぎるAV女優 case2nd「再び会ったライターと女優」

 

 

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麻雅庵(あさがあん)

人は私を、「AV業界重鎮ライター(笑)」と呼ぶ。理由は、「やたらAV女優と知り合いだから」。その関係性から知り得る、AVにおける「意図していないけど、こぼれ落ちている」部分を紹介していきたいです。

 

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